武豊の正確な体内時計はやはり逃げ馬に乗ってこそ輝く。1枠1番のキタサンブラックが絶好のスタートを決めると、武豊も逃げを決断。スタートから3ハロンは37秒5という超スローペースの入りを見せるも、1000mの通過は61秒台で、2ハロン目から6ハロン目までのラップがほとんど変わることない絶妙なペース配分。キタサンブラックは無理のないペースで淡々と逃げて脚を溜め、それでいて後続がまくってきて乱されるほどの遅いペースでもない。
さらに武豊曰く、1周目のターフビジョンで通過タイム61秒台であることと、2番手にヤマニンボワラクテが付いてきていることを見て、狙い通りの展開だと確認したという。これで完全にこのレースは武豊に支配され切った。大阪杯のように武豊の支配を崩せる横山典弘がここはおらず、他の騎手はもう動く術がない。
向こう正面で一度ペースが緩むも、かといって1ハロンが13秒台までは落ち込むことはなく、後続もまくって勝負を仕掛けられない。さらに、後続が追い出しを始めるであろう残り800mでスパートに入り、後続はそれに付いて行くことしかできない。
唯一これに太刀打ちできたのは、キタサンブラックの後ろで内ラチ沿いをぴったり走り、虎視眈々とキタサンブラックを狙っていたカレンミロティックと池添。直線に向くと一度はカレンミロティックが抜け出す。池添もここで勝ちが見えただろう。しかし、キタサンブラックはまだ脚が残っていた。痺れる日本人騎手2人による叩き合いは、最後にキタサンブラック、鞍上武豊が差し返して見せ、京都競馬場を大興奮の渦に巻き込んだ。
レースとしては前残り、馬場としては内枠が圧倒的有利だったおかげで、内で脚を溜めていた馬に利がある形となった。2着カレンミロティックに続いて、その2頭後ろで内ラチ沿いで脚を溜めるしかなかったシュヴァルグランが結果として直線で伸びて3着に。身動きできない位置にいたことが逆に幸いしたか。
カレンミロティックの後ろのインで脚を溜め続けるという予想通りの展開になったアドマイヤデウスは、直線で伸びて来たものの、最後で失速。距離が長かったのかもしれない。
そんな展開ながら、外から伸びてきて4着のタンタアレグリアは力をつけているように思うし、4コーナーを抜群の手ごたえで上がって行ってこれはもしやと思わせる場面があった5着のトーホウジャッカルはやはり長距離のスペシャリストということを示した。
期待を裏切ったのは12着のゴールドアクター。敗因としてはイレ込みが激しかったことと、終始大外を回り続ける展開になってしまったことか。それでも最後の1ハロンで完全に止まってしまったので、少し距離が長かったのではないか。
サウンズオブアースはさらにひどい15着。一瞬しか脚の使えない馬で、内で脚を溜めて勝負どころに懸ける競馬しかできないと思っているこの馬なので、変な乗り方をすればこれくらい負けることもあるだろうとは思う。なので、敗因としては、枠と鞍上藤岡佑介ではないか。
フェイムゲームはやはり後方待機で届かず8着。似たような競馬でアルバートは6着。どちらも切れる脚がないので、去年のようにスタミナ比べの持久力戦にならない限り厳しい。今年はレース前にはトゥインクルが早めに動いていく競馬を示唆していたが、1枠2番に入ってしまったのでこれも味方にはならなかった。内枠に入ってしまった時点で、トゥインクルは去年のゴールドシップ同様最後方まで下げて外に持ち出してまくる競馬しかやりようがなく、似たようなことを試みたもののゴールドシップほどの脚がある馬でもないので、中途半端なまくりでむしろ自滅するだけの結果となってしまった。
大穴で狙っていたファントムライトは先行しなかった時点で全て終わり。後ろで脚を溜めるくらいなら、押して逃げてでも勝負に出た方がよかったのではないか。
1枠1番 | キタサンブラック | 武豊 | 58 | △
| 3:15.3
|
2枠3番 | カレンミロティック | 池添 | 58 |
| 3:15.3
|
4枠8番 | シュヴァルグラン | 福永 | 58 | ▲
| 3:15.5
|
6枠11番 | タンタアレグリア | 蛯名 | 58 |
| 3:15.6
|
5枠9番 | トーホウジャッカル | 酒井 | 58 |
| 3:15.6
|
5枠10番 | アルバート | ルメール | 58 | ×
| 3:15.8
|
4枠7番 | ファタモルガーナ | 内田 | 58 |
| 3:15.8
|
3枠5番 | フェイムゲーム | ボウマン | 58 |
| 3:15.8
|
3枠6番 | アドマイヤデウス | 岩田 | 58 | △
| 3:15.9
|
8枠18番 | レーヴミストラル | 川田 | 58 |
| 3:16.0
|
7枠14番 | サトノノブレス | 和田 | 58 |
| 3:16.0
|
8枠17番 | ゴールドアクター | 吉田隼 | 58 | ◎
| 3:16.1
|
1枠2番 | トゥインクル | 勝浦 | 58 |
| 3:17.1
|
8枠16番 | ファントムライト | 三浦 | 58 | △
| 3:17.7
|
7枠15番 | サウンズオブアース | 藤岡佑 | 58 |
| 3:18.5
|
7枠13番 | マイネルメダリスト | 柴田大 | 58 |
| 3:18.5
|
6枠12番 | ヤマニンボワラクテ | 丸山 | 58 |
| 3:18.8
|
2枠4番 | トーセンレーヴ | 武幸 | 58 |
| 3:19.4
|
結果:
複勝170円的中 -310円
今年の青葉賞はマイネルハニーとノーブルマーズが飛ばして逃げたおかげでこの時期の長距離戦としては珍しいハイペース。
この、ハイペースである程度スタミナが要求される条件でのレースが、母父ガリレオという欧州のスタミナ、パワー血統を持つヴァンキッシュランを目覚めさせたか。直線で他馬を圧倒。道中縦長の展開だったが、一気に先頭を捕らえてそのまま押し切って見せた。
前走このヴァンキッシュランに勝っていたレーヴァテインはその末脚に付いて行くことができず3着。スローの瞬発力勝負で前走は勝利したものの、スタミナ比べとなると話は別か。これ以上の距離延長も向かなさそうにも思えた。
その間の2着に割って入ったのはレッドエルティスト。後方でじっくり脚を溜め、直線勝負に懸けたようなレースは、勝ちを狙うよりも権利取りに徹したような競馬だった。本番で勝負になるとは思えないが、このレースでの作戦としては大成功だったと言えるだろう。
人気のプロディガルサンは4着。早いペースにある程度付いて行って最後は失速したあたり、やはり距離が長いのではないか。兄リアルスティール同様2000mくらいのほうが向いていそう。
メートルダールは5着と、こちらも思ったほど伸びず。ゼンノロブロイ産駒なので切れる脚よりは長くしぶとい脚を使う展開はぴったりだったように思うが、それで勝負にならなかったのなら距離が長かったということか。
5枠6番 | ヴァンキッシュラン | 内田 | 56 | △
| 2:24.2
|
4枠4番 | レッドエルティスト | 四位 | 56 | ▲
| 2:24.4
|
8枠13番 | レーヴァテイン | ルメール | 56 | ○
| 2:24.9
|
8枠12番 | プロディガルサン | 戸崎 | 56 | △
| 2:25.1
|
7枠11番 | メートルダール | ボウマン | 56 | ◎
| 2:25.3
|
1枠1番 | ラヴアンドポップ | 大野 | 56 |
| 2:25.5
|
7枠10番 | ノーブルマーズ | 高倉 | 56 |
| 2:25.6
|
5枠7番 | マイネルハニー | 柴田大 | 56 |
| 2:26.0
|
3枠3番 | ロスカボス | 池添 | 56 |
| 2:26.3
|
6枠9番 | アルカサル | 田辺 | 56 | △
| 2:26.5
|
2枠2番 | ブレンドミラクル | 松岡 | 56 |
| 2:27.0
|
4枠5番 | ドンチャブ | 柴山 | 56 |
| 2:27.0
|
6枠8番 | タンサンドール | 吉田豊 | 56 |
| 2:27.4
|
結果:
ワイド690円的中 +90円
天皇賞春に続いて1枠1番に入った武豊。この枠なら思い切って逃げるしかないかと思っていたが、ソルテを楽に逃がすと、最内枠から上手くソルテの外に持ち出し2番手に。そのままソルテを追いかけることなく2番手でじっくりレースを進める。
2番手でコパノリッキーが控えたおかげで、ペースも早くならず。これでまたしても武豊の思うがまま。楽々とコパノリッキーがソルテを交わし、そのままゴール。天皇賞春に続く武豊のジーワン連勝となった。
2着にはソルテ。コパノリッキーが全く絡むことなくかわいがったおかげで楽逃げができ、中央馬相手に2着と大健闘。
3着にはベストウォーリア。3番手からの競馬でソルテを交わせないようでは少し力不足。ある程度の安定感はあるかもしれないが、他の馬と比べて抜けた武器はなく、展開が向いたとしてもこのメンバー相手で勝つのはなかなか厳しいだろう。
4、5着は追い込み勝負。先に抜け出したのはサウンドトゥルーだったが、最後はわずかにノンコノユメが差し切った。ただ、どちらも今日の展開では前には及ばず。
モーニンは8着。地方の砂がダメなのか、小回りコースがダメなのか。
1枠1番 | コパノリッキー | 武豊 | 57 | ▲
| 1:39.2
|
5枠6番 | ソルテ | 吉原 | 57 |
| 1:39.9
|
4枠4番 | ベストウォーリア | 戸崎 | 57 | ×
| 1:40.2
|
7枠9番 | ノンコノユメ | ルメール | 57 | △
| 1:40.2
|
3枠3番 | サウンドトゥルー | 大野 | 57 | ◎
| 1:40.3
|
7枠10番 | タイムズアロー | 西村栄 | 57 |
| 1:41.0
|
2枠2番 | ハッピースプリント | 宮崎光 | 57 |
| 1:41.2
|
8枠11番 | モーニン | デムーロ | 57 | ○
| 1:41.2
|
5枠5番 | ブランクヴァース | 西森 | 57 |
| 1:42.8
|
8枠12番 | メジャーアスリート | 和田譲 | 57 |
| 1:42.8
|
6枠8番 | タッチデュール | 横川怜 | 55 |
| 1:44.9
|
6枠7番 | クレバーサンデー | 瀧川 | 57 |
| 1:46.8
|
結果:-300円
ゴールドドリームが少し出遅れ、逆にケイティブレイブは好スタートから先手を主張すると、楽なペースで逃げに持ち込む。これに競りかけて行く馬もおらず、2番手に地元園田のエイシンニシパが付けてしまえば、逃げるケイティブレイブ、鞍上地元川原が勝つお膳立ては整った。
ゴールドドリームが徐々に前へと取り付き先頭に並びかけようかというところでケイティブレイブがスパート。それまでに十分脚を溜めていたケイティブレイブにゴールドドリームは付いて行くことができない。結局、余力たっぷりのまま直線を迎え、最後は7馬身差とぶっちぎっての楽勝だった。
3着争いは混戦だったがグランセブルス。続いてレガーロ。
地方馬は出番なし。
6枠8番 | ケイティブレイブ | 川原 | 56 | ○
| 2:00.2
|
5枠6番 | ゴールドドリーム | 川田 | 56 | ◎
| 2:01.4
|
4枠4番 | グランセブルス | 松若 | 56 | ×
| 2:02.0
|
1枠1番 | レガーロ | デムーロ | 56 | ×
| 2:02.0
|
5枠5番 | イーストオブザサン | 岩田 | 56 | △
| 2:02.6
|
7枠10番 | エイシンニシパ | 吉村 | 56 | △
| 2:02.7
|
2枠2番 | タケマルビクター | 田中学 | 56 | ×
| 2:05.3
|
3枠3番 | モズバンブルビー | 笹田 | 56 |
| 2:05.4
|
6枠7番 | アサクサセーラ | 木村健 | 56 |
| 2:06.2
|
7枠9番 | サプールコンゴ | 下原 | 56 |
| 2:07.3
|
8枠11番 | イツモシアワセ | 畑中 | 54 |
| 2:07.4
|
8枠12番 | リックカグラ | 吉井友 | 56 |
| 2:08.7
|
結果:
三連複930円的中 +430円
先行馬有利の名古屋だが、タガノトネールとレーザーバレットの先行争いが厳しかったのか、その後ろで脚を溜めた2頭の勝負に。
勝ったのは外から差し切ったノボバカラ。JRAオープン勝ちからの参戦だったが初交流重賞挑戦で初重賞制覇となった。
2着にはブルドッグボス。距離延長に不安があったが、問題なかった。
3着にレーザーバレット。
タガノトネールは4着。最近のレースぶりでは、マイルくらいのほうがいいのだろうか。それとも、小回りコースが合っていないのか。
1着:ノボバカラ ○
2着:ブルドッグボス △
3着:レーザーバレット ▲
4着:タガノトネール ◎
5着:スノードラゴン △
結果:-400円
圧倒的1番人気、勝って当然と海外で評価され、そんな期待を裏切ることなくファンを納得させるレースであっさりと海外G1を勝つ。そんな日本馬がこれまでいただろうか。
チャンピオンズマイルは、モーリスが楽勝。好位追走から直線で軽く追い出すとあっという間に先頭に立ち、あとは流すだけ。これでG1を4連勝。この快進撃はまだまだ止まりそうにない。
スプリント界の頂点を極めたロードカナロア、世界1位の称号に輝いたジャスタウェイのように、ここ数年は日本馬が世界の頂点に立ち、日本の競馬ファンを興奮させてきた。このモーリスもそれに続くだけの歴史的名馬であることは疑いようがない。