2019年12月31日

セランゴール競馬(マレーシア)観戦記

2019年、2度目の海外競馬観戦記です。
今回は、マレーシアの首都クアラルンプールの近くにあるセランゴール競馬場です。地名から、スンガイ・ベシ競馬場とも呼ばれるようです。
セランゴール州のスンガイベシという地域なので、東京都の府中みたいなもんです。

マレーシアのセランゴール競馬場と言えば、クランジ競馬観戦記で書いたように去年の11月に行く予定をしていましたが、自分が行く予定だった日の開催がまさかの中止になるというアクシデントによって行くことができなかった競馬場です。
その時からセランゴール競馬場のリベンジは決めていましたし、その日程は8月24、25日の土、日曜ということも、かなり早い段階から決めていました。どの程度早い段階かというと、飛行機を予約したのが1月だったくらい早い段階でした。

早々とこの土日を選んだのは、当然理由があります。マレーシアには競馬場が3つあり、そのうちのどこか1場で毎週末、たいてい土日に競馬開催があります。しかし、年に5週ほどボーナスタイムがあり、土曜と日曜で、同じマレーシアでも違う競馬場でレースが行われることがあるのです。
このボーナス週に行くことを考え、2019年の競馬開催スケジュールが発表されるのを心待ちにしていました。そしていざ発表されたスケジュールを見ると、8月24日の土曜日がセランゴール競馬、そして25日の日曜日はペラ競馬の開催となっていました。
ということで、早々にこの8月24、25日に行くことに決めたのです。

それでは、その初日のセランゴール競馬観戦記を始めます。


マレーシアへの旅と言えばやはり航空会社はLCCのエアアジア。8月23日の金曜日の夜に関西空港からマレーシアのクアラルンプール空港へ。毎度変わらず、エアアジアおなじみのA330でのフライト。22時に関空を出発し、クアラルンプール到着が現地の3時30分頃とスムーズなフライト。これまで、ロイヤルスポーツクラブ競馬(タイ)観戦記でも書いたように、エアアジアのCAは気配りなどが悪いと思っていたが、今回はあまりそれを感じず、ストレスが溜まることもなく席でのんびり過ごすことができた。と言っても、深夜便なのでゆっくり眠りたかったのにほとんど寝ることができず、徹夜に近い状態でクアラルンプールに降り立った。

とりあえず、土曜日の朝はバトゥ洞窟という観光地に行くことは決めており、5時を過ぎれば電車も動くということで、それまでに朝食。旅行の前日あたりから、なぜかカレーが食べたいインド気分だったので、今回の旅行はカレーで攻めることに。マレーシアはインド人街もあり、日本より本格的なカレーが安く食べられるだろうということで、着いて最初の食事は空港のフードコートのカレー屋。人のほとんどいない穴場的な地下にカレー屋があることを事前にチェックしておいたのでそこに。24時間営業なのか4時過ぎでも問題なく営業しており、ロティとカレーのセットを食べた。旅行の1か月前くらいから円安になったこともあるが、物価が高めの空港での食事で200円もしないのに非常に高い満足度で、ひとまずインド気分を満たすことができた。

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5時過ぎに移動を開始。クアラルンプール空港から市街地には、電車1本で行ける。KLIAエクスプレスという特急電車なら30分程度。各駅停車でも40分もかからず、どちらも座れるし快適。料金は同じ。
ただ、いつものことながらそんな普通のルートは選ばない。各駅停車の電車で、途中のプトラジャヤ&サイバージャヤ駅で一旦降りるという技を利用。このクアラルンプール空港と市街地のKLセントラル駅をつなぐ電車は、通しで切符を買うと55リンギット、約1400円だが、プトラジャヤ&サイバージャヤ駅までの切符は9.4リンギットで、そこからKLセントラル駅までは14リンギットなので、合わせて23.4リンギットとまさかの半額以下の値段で行けてしまう。空港と市街地の通し区間で切符を買うであろう旅行客を金づるにしたような料金設定になっているが、そんな鉄道会社の思惑に乗せられてたまるかと、途中下車ルートを利用。
日本も主にJRで、途中下車することで安くなるルートもあるのだが、半額以下になるようなことはさすがにない。ここまで露骨なぼったくり価格というのは見たことがない。

ちなみにこの路線は、駅のクレジットカード専用券売機で切符を買えば10%割引になる。相変わらずのどケチプランを追求し、8.5リンギットでプトラジャヤ&サイバージャヤ駅に到着。
再び切符を買いなおす前に、コンビニで飲み水を調達して近くのバスターミナルをうろうろしていたところ、このプトラジャヤ&サイバージャヤ駅から市街地の中心近くまでバスが出ていることが分かった。その値段が5リンギット。ここから電車で行けば14リンギットなのに対して、バスなら半額以下。目的地であるバトゥ洞窟へ行く鉄道が1時間に1本なので、バスでクアラルンプール到着が多少遅れても、バトゥ洞窟への到着時間が変わらないことを確認してバスに方針転換。空港からバスに乗るのは何となく乗り気ではなかったのだが、結局値段の安さに惹かれて途中からバスを使うブレブレの思考に。臨機応変というよりは、優柔不断である。

バスは電車より時間がかかるおかげで、バスの車内で十分な睡眠時間が取れたことは良かった。飛行機で眠れていなかったのに、バスの揺れの心地よさに気が付いたら眠りに落ちていた。

バスで市街地に着いてからは移動してそのバトゥ洞窟を観光。市街地に戻ってきてからは昼飯を食べて、いざ競馬場へ。
バトゥ洞窟に行くと言っておいて中身には一切触れない。競馬観戦記だけでも長文なので、それ以上書くのもめんどくさいし、このブログで競馬以外のことを見たい人はいないだろうからちょうどよかろう。
じゃあそもそもバトゥ洞窟なんて単語を出さなければよかったのに、とも思ったりするが。


セランゴール競馬場へは、市街地からRapidKLという電車で20分程度の、スンガイ・ベシ駅へ向かうのがおそらく一番メジャーな行き方だと思う。市街地のターミナルであるKLセントラル駅から直行の電車はないが、RapidKLは路線がいくつかあって、市街地を走り回っているので路線図を見て乗り換えて行けばたどり着ける。
RapidKLという名前だが、正式名称はマレー語の「Rangkaian Pengangkutan Integrasi Deras」で、その頭文字を取った言葉らしく、Rapidは英語の「速い」から来ているのではない。そのせいか、日本の情報サイトなどでも「ラピッド」と書いているページは少なく、「ラピド」と書いているページが多い。KLは「クアラルンプール」の略称なので、要約すると「クアラルンプールとつながった高速輸送」みたいな意味らしい。まあ、日本人観光客からすれば知ったこっちゃないし、むしろラピドと書かれるカタカナに違和感しかない。英語のRapidの発音を知らない馬鹿が翻訳したのかと最初は疑っていたが、何も知らない馬鹿は自分だった。

スンガイ・ベシ駅からはシャトルバスがある、という噂だが駅周りは工事中で、バスどころかバス停の姿も見えない。そもそも他の人たちの観戦記を事前に見ていたが、それを見てもバスを使ったという人はほとんどおらず、タクシーで行くのが一般的な様子。
地図上で見れば余裕で歩ける距離なのだが、駅の周りは自動車道路ばかりで歩ける道がない、というのも事前の調べ通り。タイで駅から徒歩で競馬場に向かったりと、常に海外では馬鹿みたいな距離を歩き回って旅費を浮かせていたのだが、そんな徒歩中心のどケチ野郎でも今回はタクシーを使うしか選択肢はなかった。

駅から出るとタクシーが待ち構えており、競馬場に向かう人達をまとめて競馬場まで運んでいた。呼び込みをしていたタクシーの運転手に声をかけて、競馬場に行くことを確認すると、タクシーに詰め込まれて出発した。
タクシーに「詰め込まれ」と表現した通り、普通のセダンの乗用車に乗客4人を詰め込んで出発していく。当然ながら、お互い知らないオッサン同士のはず。しかし競馬仲間ということで通じるものがあるのか、オッサン同士はタクシー内で何やらしゃべっていたりして、なかなか面白いものだった。
そんなオッサンと一緒に、まだオッサンではないと自負している自分も詰め込まれたのだが、不運なことに後部座席の真ん中席に座ることになってしまった。これがよそ者への洗礼、というわけではないと思うが、周りのオッサンたちに促されるがままにタクシーにもぐりこんだおかげで、辛い目に遭ってしまった。
さらに、ここに来るまでの電車で向かいの席に座っていた、いかにも競馬場に行きそうだが見るからに汚くて近寄りたくないオッサンと同じタクシーになり、しかもそのオッサンが左隣の席になったので、このタクシーでの気分は最悪だった。汚いオッサン=競馬場のイメージは、アジアに限れば正解だろう。
ただ、4人で相乗りしているおかげで、通常20リンギットのタクシー料金を5リンギットで行けたので何とか耐えてやろうと思えた。これ、タクシーの運転手としては大損だろ、と思いながらも有り難く5リンギット、約130円で競馬場に着くことができた。


タクシーは競馬場入場門の目の前に到着。というか、入場門の目の前には入場券売場と新聞の売店しかなく、そこには無駄にだだっ広いスペースがあり、その周りは全て駐車場になっている。競馬場の周りが自動車専用道路なのだから、駐車場しかなくて当然なのだが。

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何もないのだからさっさと入場。入場料は6リンギット、約150円なので普通の値段。日本と変わらず、窓口で現金で買った入場券がこれ。

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券と言うよりはカード。これで、入場ゲートにタッチして通る、日本よりハイテクなシステムが導入されている・・・わけはなかった。ICカードではなくただのプラスチックカードで、ゲートにいる係員に手渡しするだけだった。
と、マレーシアを馬鹿にしたような発言だが、日本の競馬場のペラッペラの紙切れに比べればよくできたものだ。香港や韓国のキャッシュレス化が進んでいる国では、日本でいうSuicaのようなICカードで競馬場にも入場できるので、日本の競馬場がいかに遅れているかが実感できる。
JRAはどうしてあの入場ゲートに手を加えないのだろうか。そうまでして、チケットもぎりやチケット売りの女性の雇用を確保する必要があるのだろうか。

近くの売店で売っていた新聞は中国語版と英語版があったが、当然買うのは英語版で7リンギット、約180円。戦績などがしっかり書かれており、他場も同じように詳しく書かれているので、日本で考えるスポーツ新聞というよりは、競馬ブックのような競馬新聞に近いものだが、それでこの値段は安い。


さて、何気なく書いた「他場」という言葉だが、マレーシアでは同じ日に他場の開催はなく、他国の競馬を同時に発売している。発売しているのは公式サイトを見る限りでは、オーストラリア、マカオ、香港、南アフリカ、シンガポール。マレーシアはシンガポールと同じマラヤンレーシングが主催しているので、シンガポールのクランジ競馬場と同じシステムで発売をやっているはず。なので、シンガポールが買えるのは当然だし、シンガポールとマレーシアの両方でオーストラリアなどの海外馬券が買える。
オッズは日本の海外馬券発売と同じように、現地と違って自国内での専用オッズになっている。

ただ少し面倒なのは、シンガポールはさすがは都市国家でマークシートがあったものの、マレーシアはタイと同じく口頭で窓口で馬券を買う必要がある。そのため馬券を買うときに場名も英語で伝える必要があり、他場を買う時ならまだしもマレーシアで目の前で発走しようとしているレースを買う時にも場名を聞かれたりする。目の前のレースしか考えていない時に、急に「セランゴール?」とか窓口で聞かれると、何のことかと一瞬戸惑ってしまう。


この日のセランゴール競馬場の1レース発走は14時00分。しかし国を超えて馬券を発売しており、1レース発走前にオーストラリアの競馬は盛り上がっていた。
着いてまず最初に買ったのは、オーストラリアのランドウィック競馬場で行われたウィンクスS。たまたまオーストラリアのG1が13時45分というちょうどいい時間に発走だったので、これの発走に間に合うように競馬場に到着した。
オーストラリアなので日本でもよく知られた騎手が多く乗っており、その中でも馬の実力も申し分なさそうだったボウマン騎乗のハッピークラッパーの複勝を買うと、これがいきなり的中。まだマレーシアの競馬が始まっていないながらも、フライングで好スタートを決めることができた。
ただ、オーストラリアのオッズでは1.8倍くらいだったのだが、マレーシアではまさかの1.0倍の元返しだった。フライングスタートを決めてやったと思ったら、カンパイになってしまった。

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このオーストラリアの馬券だが、「OTH RACE 6」と印刷されている。OTHは「他」を意味する「OTHER」のことだが、このレースはランドウィック競馬場の第7レース。ややこしいところだが、マレーシアで発売する他場レースの6レース目、という意味になる。そのため、OTH RACE 7はまた別の国のレースだったりする。

ちなみに、このレースを見ている時、後ろにいたオッサンが直線で「ボウマン」とずっと叫んでいた。オーストラリアの馬券はマレーシアで常に発売しているので、熱狂的なマレーシアの競馬ファンはオーストラリアや香港もよく見ているということか。マレーシアの馬は海外で活躍するようなレベルではないので、マレーシアのオッサンが、海外の競馬に詳しい「世界の合田」のような豊富な知識を持っていることはないだろう。

そんなオーストラリアのG1が終わると、お待ちかねのセランゴール競馬場の1レース目。
オーストラリアの馬券は当たったものの、とにかくまずは現地の馬券を当てることを目標に、ここも複勝1点勝負。窓口で口頭で拙い英語で伝えて馬券を購入。
馬券を受け取って馬場のほうへ・・・と思って馬券を見てみると、単勝馬券になっている。
複勝の英語「PLACE」と言ったにもかかわらず単勝の馬券になっていた。

まあ、狙った馬が1着に来ればいいわけだし、と思いながらレースを見ていた。買ったのは2番の馬。

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見事、3着に。

複勝なら当たっとるやんけ。窓口のオッサン、何してくれとんねん。

しかしまだ先は長い。気を取り直して次の2レース目。同じように複勝1点で馬券を買って、まずは当てておきたい。同じように窓口で馬券を買う。出てきた馬券を見ると、またしても単勝馬券になっていた。

2レース続けて嫌な予感はしたが、その場で抗議するのも面倒、というか英語でちゃんと伝えられる自信もなかったので、素直に受け取ってレースを観戦する。今度は5番の馬。

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2着に来るんかい。

2レースとも、複勝なら当たっとるぞ、おい。

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さすがにこれは腹が立つ。オーストラリアの馬券はちゃんと複勝で買えたのに。馬券売り場の人によって英語の理解度に差がありすぎる。
もういっそこれなら、今日は全部単勝で勝負してやろう。そんな気持ちが芽生え、続く3レース目は券種を指定せずに馬番だけを伝えた。複勝と言っても単勝が出てくるのだから、何も言わなければ単勝が出てくるんじゃないのか。そう思っていたら、今度は逆に売り場のおばちゃんから、
「WIN?PLACE?」
と聞かれてしまった。

単勝で買う気満々だったものの、この一言で心が揺らいでしまい、とっさに
「PLACE」
と答えて、結局複勝を買うことに。

どうせこの流れなのだから、今度はこの1番の馬が1着に来るんだろうと思いながらレースを見ていると・・・

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2着!

複勝で良かった。心を揺さぶってくれたオバチャンに感謝するしかない。

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とりあえず馬券を当てることができたので、一安心。あとはいつものように競馬場をウロウロして競馬場内のいろんなところを見ながら、レースも見ることに。
ちなみに、この日は残りのレースもボチボチの結果に。
ただ、最初もそうだったが英語が伝わりにくく、思い通りの馬券を買うことが難しかった。最後にすると決めた7レースでは、5リンギット賭けようと思って10リンギットを窓口に出して5リンギットと伝えたものの、お釣りをもらえず10リンギットの馬券となってしまった。これが当たったから良かったものの、外れていたら馬券売り場のオバチャンを恨むところだった。

結局、オーストラリアも含めて合計8レースで、45リンギット賭けて払い戻しは39リンギット。6リンギット、約150円の負けという結果になった。
というか、最初の2レースともちゃんと複勝買えてたらプラス収支やったやん・・・。


馬券の話はこの程度にして、セランゴール競馬場の紹介を。

入場ゲートを通って競馬場に入っていくと、スタンド2階の裏側に着く。ここでいきなり目に飛び込んでくるのが、フードコートのような屋台群。

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このフードコートのようなところだが、なかなか店の数も多く、小規模な競馬場のわりに10くらいの店が並んでいた。
日本の競馬場のように、明確にフードコートエリアと仕切られているわけでもなく、スタンドの少し奥や横の方には馬券を買える窓口が並んでいるので、すぐに馬券も買える。
もちろんオッズやレース映像が表示されるモニターもあるので、そこで席に座って飯を食べるもよし、予想をするもよし、といった環境になっている。

さらに奥に行けば、1階へ降りる階段と3階へ上がる階段がある。1階部分は吹き抜けになった通路になっており、その吹き抜けがスタンド内を横断しているので、一旦2階部分はここで途切れて、1階か3階からコース側に出ることができる。

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1階からコースに出れば、上の方に屋外席があり、椅子が並んでいるので座って観戦できる。もちろん、コースの外ラチ近くまで行って見ることもできる。

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ちなみに、マレーシアはやたらとハトが多く、普通にエサをやるおっさんもいる。おかげで椅子を含めて観戦席周りはハトの糞だらけで、椅子が大量にあって人も少ないのに、使える椅子を探す必要があるのは少しうっとうしい。公衆便所に入ったら和式ばかりで洋式便器を探すような感じ。まあ、そういうおおらかさというのは、日本にはない良いところとも思うのだが。

また、3階からコースへ出ると、ゴールから離れた側に屋外席がありそこからも観戦できる。ただしゴールから100mくらいは離れているので、全体は見渡せるがゴール前は見えにくい。

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3階のゴールに近いエリアは何かというと、エアコンルーム。20リンギット払えば涼しい部屋の中で観戦できる。500円程度なので日本の地方競馬の有料席の最安席と同じ程度の相場だった。
クソ暑いマレーシアなので需要があるかと思ったが、エアコンルームの中の人はかなり少なかった。そんなところよりも馬券にお金をかけたいという人が多いのだろう。

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スタンドは4階建てだが、4階は会員レストランで、動き回れるのは3階まで。
ただ上の写真にもあるように、コース側から入れる半地下のような所に、ガラス張りの謎の空間があった。入った中はバーか何かのようだったので、ちゃんとお金を払って飲食をする人は、ここで競馬を見ることもできるのだろう。エアコンがガンガンに効いた部屋だったので長居したい気もしたのだが、中に入って何もせずにいると警備員が近づいてきたので、慌てて逃げてしまった。金出せ、写真消せ、とか何を言われるのかも分からないし、どうせ言葉が理解できないと思ったので、サイレンススズカのように逃げの一手。そのため、実際にどういう場所なのかは把握できないままだった。


パドックはスタンド裏側ではなくスタンドよりコース側にあるタイプ。ゴールの真正面がパドックになっているおかげで、ゴール前に張り付くように競馬を見ることができない。
そして上の3階は別料金のエアコンルームになっているので、ゴール前のベストポジションで観戦する権利は庶民には与えられていない。
パドックよりもさらに1コーナー側は会員エリアで、パドックを挟んで会員エリアと一般エリアが分けられている、香港のハッピーバレー競馬場でも見られたような配置だった。
パドックの真ん中には、勝った馬の写真撮影、いわゆる口取りの場所になっていて、ゴール板と同じような形のオブジェが置かれている。

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パドックの時間はちゃんと存在するものの、日本ほど長くはない。前のレースが終わってから5分ほどが過ぎてからパドックが始まり、5分程度で返し馬に出ていく。


レースは芝の左回り。内回りコースと外回りコースがあり、外回りコースは500m程度の直線があるので、とにかく競馬場のコースは広いのだが、スタンドはゴール前200m程度の距離しかない。そしてこれだけ広い競馬場なのに、ターフビジョンがないおかげで、肉眼ではほとんどレースの様子が分からない。ゴール前に来るとようやくどの馬が先頭にいるのか分かることになる。
そんな競馬場なので、実際にコースに出てレースを見ている人は少なく、もっぱらスタンド内のモニターでレース映像を見ている人が多かった。また、タイのような双眼鏡の貸し出しもやっていなかった。むしろこれに関しては、タイのむさ苦しいほどのオッサン達の熱気が特殊過ぎるのだろう。

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こんな長い直線があるにもかかわらず、馬のレベルの低いのか、ほとんどのレースは前に行ったもの勝ち。後ろからの差し切りはほとんどなく、スタートから前に行ける馬が勝つのが当たり前のようだった。新聞の戦績を見ても、スタートが決まって前から行った時は好走し、後方からのレースになった時は惨敗という馬が何頭もいた。

日本からすれば馴染みのないマレーシアの競馬だが、この日のメンバーを見ていると、驚いたことに日本から移籍した馬がいた。オールマイアイという馬で、2014年にデビューしたハービンジャー産駒。日本では勝ち星こそないものの2着が3回あるような馬だったが、地方に移籍して惨敗続きのままさらにマレーシアに移籍となった馬で、完全に力を失ってしまったようだ。マレーシアでの戦績は16戦して2着が1回だけという負けっぷりで、日本のレベルを疑われるのではと心配になるほどだった。


1レースの発走は14時。その後は全て30分間隔で、この日は9レース行われて最終レース発走が18時だった。
マレーシアの競馬は、同じような立地のタイとは違って時間に正確で、発走時間になるとファンファーレが鳴ってゲート入りを始める。マレーシアはしっかりした国だ!と言うつもりはなく、これもタイが特殊なだけだろう。タイの競馬場と比べると、世界中どこの競馬場もまともに見えてくる。
このセランゴール競馬場のファンファーレは、船橋競馬場の通常競走と同じものだった。このファンファーレについて調べてみたところ、アメリカのケンタッキーダービーでも使われている曲で、出元は軍隊で使われたラッパのフレーズだったらしい。

レースは1300mが多かったが、1400、1600、1800mもあり、距離についてはかなりバリエーションのある競馬場で、しかも内回りと外回りもある。
新聞に書いてあるコース図を見る限りでは、1000、1050、1100、1200、1700、1900、2000、2200、2400mのスタート位置が書かれていた。実際にどれだけレースが行われているのかは分からないが、1100、1200、1700、2000mはここ1年以内の戦績で見つけられた。
この日は最大14頭立て。過去には16頭立てとかもあったようだが、今もやっているかは分からない。

競馬新聞の戦績だが、1つだけ読解がかなり困難な項目があった。それは、戦績のコースの部分。とにかくバリエーションが豊富で、AscKや、strI、lcI、P、Sなどと書かれており、さっぱり分からなかった。
説明欄を見て、とりあえずscとlcは、short course、long courseで内回りと外回りの違いだと理解できたものの、それ以外がなかなか分からなかった。後から読み解いた結果、どうやら末尾の大文字、K、I、P、Sの4種類が競馬場を表していることが分かった。
かといって、この4つがどの競馬場かというのがまた難しい。これも開催日と戦績を照らし合わせた結果、
K:セランゴール競馬場
I:ペラ競馬場
P:ペナン競馬場
S:クランジ時競馬場
という結論に行きついた。どう考えてもKとSは逆だろうと思うのだが、セランゴール競馬場のある街、クアラルンプールの頭文字Kと、クランジ競馬場のある街、シンガポールの頭文字Sを取っているのだと考えることにした。
そう考えれば、ペラ競馬場も街の名前であるイポーIだと分かった。海外なので当然半角英字しかないので、大文字のアイ(I)なのか、小文字のエル(l)なのか判断できないところだったが、これで納得がいった。
そして、頭のAはセランゴール競馬場の内回りAコースを、strは直線コース、つまりstraightを意味しているようだった。こうして、非常に分かりにくいがなんとか読み取ることができた。
最初の例で言えば、AscKはセランゴール競馬場の内回りAコース、strIはイポー競馬場の直線コース、lcIはイポー競馬場の外回りコース、といった具合。
なんでこんな分かりにくいんだと腹が立ったが、そういや日本の競馬新聞も、中京競馬場は名古屋を意味する「名」と書かれているなあと思うと、日本も同じようなものかと思った。日本は中山と中京を区別するための「名」表記だと思っているが、同じようにマレーシアもペラ競馬場とペナン競馬場のP被りがあることに気づいてしまったがゆえに、工夫が必要だったのだろう。


あとは、現地のオッサンの様子を書いておく。
同じような東南アジアのタイやシンガポールとはまた少し違った観客の様子だったので、大げさに言えば競馬場はその国の土地柄を知れる場所のような気がした。
シンガポールは客の人数が少ないこともあったが、割と穏やか。タイはレースごとにオッサンたちの大合唱があってとにかく騒がしい。
今回のマレーシアは、一部のオッサンがとにかく大声で叫んでいて、それ以外の人は静かに見ている。じっくりパドックを見る人もいれば、ずっとモニターで他場のレースをやっている人もいて、各々が好きな楽しみ方をしている印象だった。

最も全力で競馬をしていると思われる、叫ぶタイプに分類できるオッサン達は、その叫び方が日本とは違った。日本のオッサンの叫びは、
「差っ!」、「のままっ!」
と、文字にすれば語尾に小さい「つ」が入るような、スーパードライのようにキレがある叫びだと思う。
一方でマレーシアのオッサンの叫びは、
「差せえ~」、「そのまま~
と、語尾を伸ばすので、余韻とコクのあるエビスビールのような叫びだった。いや、このビールの例えが適切かどうかは分からないが。そもそもマレーシアのオッサンが「差せ」や「そのまま」と叫んでいるのかも分からないので、適当この上ない考察だ。

そして、気合の入ったオッサンになると、これに手の動きが加わっていた。それもみな同じような動きで、右腕を左下から右上に振り上げるような動きで、
「そのまま~」
と叫んでいるのだった。だから「そのまま」って叫んでいるのかは知らないが。
日本だと、力が入った時にこぶしを握り締めて腕を胸のあたりで少し上下させたり、上に挙げた腕を後ろから前に振るような動きが一般的だろうか。そもそも馬券を買って腕を振ってまで気合を入れて叫ぶオッサンを、一般的と称するのはどうかと思うが。
それなので、今までに見たことがないような動きで競馬を見ているオッサンは、なかなか斬新だった。
当然ながら、気合の入ったオッサンはどんなレースでも馬券を買っているもので、その動きは目の前のマレーシアのレースに限らず、中継されているオーストラリアのレースでも同じように叫んでいた。
こういうのを見れるのも競馬場の面白いところの一つだよな、なんて思いながら、午後のひとときを過ごしていたのだった。


そんなこんなで競馬観戦も終わり、帰り道の話。と言っても行きと同じようにシャトルバスは見つからず、ゲートを出たところで探す間もなくタクシーの運転手が声をかけてきた。スンガイ・ベシ駅、と伝えると20リンギットと言われ、高いと思って戸惑ったがそりゃそうだった。最終レース前に抜け出して帰ったせいで、周りに他の人がおらず1人でタクシーを使うことになり、行きの4倍の20リンギットを払うことになった。
実在するのか分からないシャトルバスに乗るか、タクシー配車アプリを使えばもっと安く帰れたのだろうが、面倒だしやめた。
一応、他に一緒に帰る人がいないか探したが、鉄人金本のようにフルイニング出場、つまり最初から最後まで観戦する人がほとんどのようだった。
しぶしぶ20リンギット払ってタクシーに乗ったら、なぜか行きとは違う、目的地より1つ離れた駅に連れて行かれた。タクシー代に加えて、無駄に1駅分電車賃増えたじゃねえか。なんだったんだ、この運転手は。

そこからクアラルンプール市街地に戻ってホテルで宿泊。クアラルンプールはホテルが安いことで有名で、冷房も効いてシャワーもある普通のホテル1部屋が、2泊で150リンギット。2泊で4000円もしない激安だった。

ちなみに、出発前からカレーの気分で朝飯はカレーと最初に書いたが、晩飯はフードコートでビリヤニを食べた。いっそのことインドの競馬場行くべきだったか。


これでマレーシア初日、セランゴール競馬観戦記は終了となります。
翌日は、最初に書いたようにボーナス週なのでペラ競馬観戦に向かうことに。
次回、ペラ競馬観戦記に続きます。
posted by ナイト at 22:23| Comment(0) | 競馬観戦記 | 更新情報をチェックする
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